出産レポ(2人目)

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    2014年5月19日(血などが出ます)

    予定日四日前。
    早朝から断続的な腹痛がある。前駆陣痛だ。

    これは本番の陣痛の前座みたいなもので、規則的に痛くなったり治まったりを繰り返す本陣痛とは違い、感覚は不規則で暫くすると立ち消えてしまう。
    一人目の出産前はなかったような気がするのだが(気付かなかっただけ?)、今回はこれがめちゃくちゃ多い。一週間くらい前から「今度こそ本陣痛か!」と身構えているのだが、結局毎回途中で立ち消えてしまう。

    もー早く産みてえよーー
    お腹重いしちょっと疲れると体調悪くなるし

    早く産んですっきりしたいよ!うつ伏せになりたいよう!!!!


    数日前から積極的に歩くようにしてるし、陣痛を促進するという噂のハーブティーも飲みまくってる。
    階段上り下りすると産まれるとか聞くから、階段の代わりに家で踏み台昇降をしまくってる。
    一人目はこんなことしなかったぞ!周りの頑張ってる妊婦尻目に、んなことしても意味ねえよって思ってたよ!!

    早く産みてえよ。買い物に出た先で、息子が駄々こねる度にお腹が痛くなる生活はもういやだ。
    いつ入院になっても良いように、冷蔵庫になるべく食品を残さないように気を揉む生活はもういやだ。
    前回が予定日より十日も早く産まれちゃったから、今回は二週間くらい早まってもおかしくないんじゃないかと思って、二週間前から臨戦態勢だよ。もう臨戦していることに疲れた。早く出て来い。

    ついでに先週の健診で、お腹の子の推定体重が3400gと言われて、これ以上大きくなられたら難産になりそうで心配なのもある。
    今何gくらいなんだろう…このまま行ったら4kg近くなってしまうのではないか…

    もう焼肉食べると産まれるとかいうジンクスに懸けて、昨日焼肉屋行ってきたもんね!!
    昨晩から明らかにお腹の膨らみの位置が下がってきてるし、今日こそ、今日こそいけるのではないか?

    今日産まれてくれれば、今日の健診で血液検査を受けなくて済むので
    ちょっと出費が抑えられてお得なんだぞ!


    今日産まれろ!是非産まれろ!



    そんなことを思いながら夫を送り出し、「あーでもどうせ今回も前駆なんだろうなあ」とか言いながらソファにもたれて腹をさする。
    あー痛え…痛えなあこれ…

    ふと、もしかしてこれ、痛み等間隔で来てる?と思い、時計を見てカウント開始。

    …あれ?12分毎に来てる…え?陣痛?

    12分は、経産婦ならもう病院に連絡しなくてはならない間隔だ。
    だが、何回か計ると間隔が乱れて不規則になる。不規則ならやはり前駆だ。
    規則的かと思いきや不規則。何度か等間隔が続き、次も○分間隔だったら病院に電話しよう!と思うとまた乱れる。
    今日は11時半から息子の幼児教室があったのだが、迷っている内に時間になってしまった。ていうか結構痛い。欠席の時は電話をしなくてはならないのだが、ちょっと電話する元気もない。何だこれ痛い。これ結構痛い。

    結構痛いが、相変わらず間隔は定まらない。やはり前駆なのか。

    こんな本番か前駆かわからない痛みが続くなら、前回みたいに早く破水してくれればいいのに。
    そしたら迷う余地もなく入院&出産に至れる。
    そんなことを考えながら、何度もトイレに入って確認する。だが破水はしていない。破水来いよ破水!

    またちょっと気持ち悪い話で申し訳ないが、何度目かのトイレで突然、でろーんとした赤い物が出てきてビビった。
    これが噂に聞く「おしるし」というやつか…前回はお目にかからなかったし、今回も今日まで一切なかったから、二度の妊娠で結局見ることなく終わるかと思っていたぞ。見れて良かった。記念的な意味で。

    でも、おしるしが来たからと言って、破水と違ってすぐに出産に繋がるわけではないので、結局決め手にはならない。
    もー産まれるか治まるか早くどっちかに落ち着いて〜
    出来たら産まれて〜〜〜
    さっきから息子が遊んで欲しがっているが、ちょっともう構う余裕がないので、最近買ったばかりのこれを与えておいた。



    地味に散らかるので、あまり積極的に与えたくはないのだが仕方がない。腹痛え。
    喜んで遊んでくれるので助かる…床に砂が散らばってるけど…

    10時前くらいから始まって、間隔が定まらないまま気が付けば14時。
    ソファでうんうん唸っていると、夫から状況確認のメールが来る。
    間隔バラバラなので前駆だと思うが、時間が長いので辛いとボヤくと「とりあえず病院に電話して指示を仰いでみたら?」と言われる。「向こうはプロなんだから、入院した方が良いって判断になるかもしれないよ。駄目元で電話してみなよ」

    確かに…どうせ前駆とあしらわれるだけだろうから、と今まで電話をかける気になれなかったが、駄目元でかけてみても良いかも知れない。

    ていうかもう「入院してね!」って言って欲しい。いつ産まれるかわからないまま一人で家で待機してるのも不安だし、食品の残量のことを考えながら食事を作るのももう嫌だぞ!入院したい!!

    もう電話だ!電話する!!

    トゥルルルル トゥルルルル
    『はい、○○産婦人科です』
    「あのぅ、そちらで分娩予定の者なのですが、前駆のような本陣痛のような痛みがずっと続いてまして…」
    『そうですか。今どれくらいの間隔ですか?何時頃からですか?それから、お名前と診察券の番号をお願いします』

    状況と名前、番号を告げて、暫し待つ。
    『お待たせしました。経産婦さんですし、入院になるかもしれませんので準備をしてからこちらへお越し下さい』

    あっさりとそう言われて、少し焦る。
    え、間隔バラバラだよ?荷物持ってっちゃっていいの??行っていいの??

    で、でもその気になって病院行って、「あーやっぱまだ産まれませんね」って帰される人もいるって聞くし!
    まだわからないぞ!!

    慌てて荷物の最終確認をし、子供の身支度を整えてタクシーを呼ぶ。
    入院が決まったら、上の子は義実家に預けることになっている。自分の入院用荷物に加え、子供の着替えやらおもちゃやらも持って行かねばならない。

    今すぐに義母に迎えに来てもらえば、診察中に上の子の面倒を見てもらえて助かるのだが、多忙な義母を今から呼び出して、いざ病院で結局入院せずに帰されることになったら
    「すんませーん、入院になりませんでしたあ♪もう帰っていいですよ!また呼んだら来て下さいね☆」
    とか言わなくてはならない…。
    別にそれで怒るような人ではないのだが、やはりちょっと呼びづらい。

    少し迷って、結局実母に電話をかけて来てもらうことにした。
    義母に連絡するのは入院が確定してからにしよう。そうしよう。

    タクシーが来たので荷物を抱えて乗り込む。この状況で、やんちゃ盛りの息子がふざけて逃げ出したらどうしようかと少し危惧していたのだが、幸い「ブーブに乗るよ!」と言ったら喜んで乗ってくれた。助かった。


    何となくタクシーの運転手さんに対し「全然余裕ですから大丈夫ですよ」的な感じを装って乗車。

    何故余裕を装ったのかは自分でもよくわからないが、何かこう、今にも産まれそうな妊婦とか運転手さんも引くじゃん?怖いじゃん??

    でも「全然平気ですから」みたいな顔で乗っておいて、突然ガチで産気付くよりは、最初から「もう産まれそうですぅ〜車内で産んだら申し訳ございません〜〜」って態度でいた方が、運転手さんも心の準備が出来ていいのかも…?
    いやもうよくわかんない。

    とにかく平気そうな顔で乗ったし、車内で産むこともなかった。


    ワンメーターで病院に到着。
    受付で名前を言うと、ナースが出て来て荷物を持ってくれた。
    「あら、一人で来たの!?誰か上の子の面倒見てくれる人は!?」
    後から身内が来てくれることを話す。皆、最初から付き添いと一緒に来たり、子供預けてから来たりするもんなのかな?

    割とすぐに呼ばれて診察。
    医者「子宮口は3センチ弱くらいかな、開いてますね。入院になります。準備が出来たら呼びますので待合室でお待ち下さい」

    あれっ、追い帰されない。これマジで今日産まれるくさい。

    陣痛室に案内され、分娩用の服に着替えるよう指示される。
    とにかく入院が確定したので、義母に連絡を取り、息子を迎えに来てもらうことにする。
    息子はベッドの周りをちょろちょろしたり、カーテンをバサバサやったりして遊んでいる。
    制止しても聞きやしねえ。他に人(妊婦)がいなくて良かった。

    電話を終えて程なくして、先に連絡していた実母が到着。息子を任せ、私は陣痛の間隔を測るために隣室へ行くことに。
    助産師さんに「お兄ちゃん元気ねー。あの子の相手してたら陣痛早まりそうだわ(笑)」とか言われながら移動する。

    お腹にセンサーを付けられて、測定開始。
    家を出る前は不規則だった痛みは、規則的な本陣痛へ変わっていた。
    助産師「今5分間隔ですね。このまま30分程様子見ますね」

    えっ、既に5分!?

    マジか…二人目は一人目より時間かからないって言うし、夜までには産まれるかもな。
    立ち会い希望だった夫は間に合うかな〜

    30分経って、測定終了。この時既に3分間隔。
    部屋を出ると廊下で義母が待っていた。息子は実母に連れられて1階の待合室にあるキッズスペースで遊んでいたので、二人でそちらへ移動。それから息子の泊まり用の荷物を渡して託す。

    義母が息子を連れて帰宅し、私は陣痛室のベッドに横になって待機。
    息子はニコニコしながら去って行ったが、私と離れてのお泊りはこれが初めてだ。

    一応「ママの入院中はおばあちゃんちでお泊りだよ」という話はしてあったが、どこまで理解出来ているのか…

    大丈夫かなあ。

    「腰擦ろうか?大丈夫?」と言ってくる実母に平気平気と応じながら腹を擦っていると、隣のベッドに他の妊婦が来た。
    騒がしい息子が去ってからで良かった。
    陣痛の合間に母と雑談をしながら、痛みが強くなるのを待つ。

    しばらくして、隣のベッドから聞こえてくる声に気付いた。
    声というか、泣き声だ。
    隣の人が、一人ですすり泣いている。

    えっ。どういうこと。産婦人科で、陣痛室で、隣の人が泣いている。
    まさかお腹の子に何かあった…??

    勝手に心配していると、助産師さんが入ってきた。
    「あら○○さん、どうしたの〜?痛くて泣いてるの?だめよーそんなことじゃ〜(笑)」

    陣痛が痛過ぎて泣いていただけらしい。何だびっくりしたなもう。

     

    「しっかりしなさいよ、お母さんになるんでしょ!」

    隣の人を励ましてから、助産師さんがこちらの様子を見に来た。
    「栗原さん、どうですか?ちょっと一回内診しようか」

    お腹に何か器具を付けられて、診察。子宮口は3センチ。さっきから広がっていない。
    何だ、もう即行で産まれるかと思ったのに意外と焦らすな。あとどれくらいかかるのかなー。

    隣のベッドにも、付き添いの家族が到着したらしい。妊婦が痛みを訴えているらしい声が聞こえてくる。
    聞こえてくるが、それがどう聞いても日本語じゃない。隣の人は外国人らしい。
    どこの国の人だろとぼんやり考えていると、再び助産師さんが入ってきた。

    「○○さん、めそめそ泣かないの!皆そうやって産むんだよ!中国の人だって同じでしょ!?ねえ、お母さん。お母さんもこうやって痛みに耐えて産んだんでしょ。ほら、頑張りな!!」

    隣の人は中国人らしい。さっきのは中国語だったのか、全然わからなかったなあ。
    少しして旦那さんが到着。こちらは日本人らしく、以降隣からの声が二か国語になる。
    「痛い!アイヤー!」って言ってた。二か国語で泣いてた。ちょっと感心した。

    中国が本当に普通分娩が一般的なのかどうかは知らない。

    そうこうしている内に、余裕こいてた私もかなり痛みが強くなってくる。
    自宅でここまで痛くなってたら、ちょっと一人で病院来るのも難しかったかも…動ける内に移動しておいて良かった。
    夕飯が運ばれてきたが、ちょっともう食べられる感じじゃない。産んでから食べよう。うん。

     

    様子を見に来た助産師さんに「あら、食べてないの?食欲ない?」と訊かれるが、「あっ産んだら食べます!」と即答する。

     

    助「そうですか(笑)じゃラップかけてお部屋の方に運んでおくね」

    私が分娩後に入る予定の部屋に運んでくれるらしい。やったぜ。

     

    運ばれていく膳を見送ってしばらくすると、助産師さんが隣のカーテンの中へ。

    どうやら隣の人も食事をしていないらしい。

     

    助「○○さん、どうしたの?泣いてないで食べなきゃ駄目よ!食べないと陣痛進まないよ!

     

     

    あれっ、私の時と態度ちがくない!?

     

    私には!?私にはそういう愛ある感じの叱咤はないの!?

    あれなの?経産婦だから??

     

    こいつは放っといても勝手に産むからいいだろって思われてるの????

     

     

    うん、別にいいけどね…

    実際大丈夫だけどね…

     


    黙々と腹を擦っていると、会社を早退して来た夫が到着。時刻は午後5時半過ぎ。
    欲しい物はないかと訊かれ、廊下の自販機で飲み物を買ってきてもらおうと頼んでいる時に、ふと昨日まで考えていた「出産時に留意すべきこと 其の一」を思い出す。

    留意すべきこと其の一、分娩前にトイレに行くこと

    前回は分娩後、安静にするよう言われて寝ている間にトイレに行きたくなって困ったのだった。
    今の内に行っておこう。
    痛みが治まった隙を突いてトイレへダッシュ。可能な限りの最速で動いたつもりだったのに、陣痛室の向いにあるトイレから戻る前に痛みが再開。これもう1分もないんじゃないか間隔。とりあえず其の一はクリア!

     

    ちなみに「お茶か水を買ってきて」と送り出した夫が買ってきてくれたのは

    イチゴヨーグルトでした。

     

     

     

     

    うん、ありがとう…

    お茶も水も売ってなかったから、私が好きそうなのを選んできてくれたんだね…

     

    そうだね…普段の私だったら喜んでた…喜んで飲んでた…

     

    でもごめん…

    今飲みたいのはそれじゃない。

     

     

    もっとこう…すっきりしたサラッと飲めるやつが良かった…

     

     


    いつまでかかるかわからないので、母にはここで帰宅してもらった。
    痛みはどんどん強くなる。陣痛ってこんなに痛いもんだったっけか?
    後どれだけ耐えればいいのー、もう早く産んで終わりにしたい…辛い…

    こんなに痛いのならもう三人目は産まねえ!!!

    腹は痛いが、一人目出産直前に感じたあれがまだ来ていない。
    コークスクリュー肛門が来ない。
    あれが来れば産まれるんだ…早く、早く来いスクリュー!!

    少しして、ついに肛門圧迫が始まった。
    待ってました!それ頑張れ!押せ押せ赤子!!

    だが押しては来るが、コークスクリューになる気配がない。前回より断然弱い。
    弱いんだけど、弱いんだけど…

    それでも結構強い… 痛い…!!

    もういい、もう充分耐えた。これもう呼んでいい。
    渡されていた携帯(PHS?)で、ナースステーションに連絡を入れる。


    栗「結構痛み強くなってきました…」
    助『はい、今行きますねー』

    すぐに助産師さんが入ってきて、診察してくれる。
    助「結構開いてきたねー。赤ちゃん、パパが来るの待ってたのかな?(笑)じゃ分娩室行こうか!」

    いい笑顔で言われた。もう子宮口も全開に近いようだ。

    本当に待ってたんだろうか?

    母体の安心感的なのが影響するとかはあるのかも知れないな。


    とにかく、よっし!ようやく産めるぞ!!


    痛みが治まったタイミングを見計らい、隣の分娩室に移動。
    ほんの少しの距離なのに、分娩台に上がる前にもう痛みが再開し出した。痛みを堪えてよじ登る。
    痛い、これマジで痛いマジ
    危うく「もうやだ」とか弱音吐くとこだった。全然やじゃないです早く産みたいです。産ませて下さい。

    分娩台に上がってから、しばらく待たされる。医師が都合つかなくて来れなかったせいなのか、やたら長く待たされたように感じた。
    必死で痛みをやり過ごしながら、どれくらい待っただろうか。
    助産師さんが「じゃ、ちょっといきんでみようか」と言った。
    ようやく出産開始だ!もうポンと出したい!ポンとね!!!

    前回は同じ病院で「手すり掴んで!重いバケツを持ち上げる感じで力入れて!おへそ見て!息止めて!声出さないで!!」と結構細かくいきみ方を指導されたのだが、今回はフリースタイルらしい。その時の助産師さんによるのかな。

    留意すべきこと其の二。
    頭の血管が切れないように注意。
    首から上に無駄な力を入れないように気を付けよう!

    助「自分のタイミングで始めてね」
    栗「はい…ん゛ん゛! ん゛んんううんんエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!

    自然と声が出た。

    それは少しヤギに似ていた。

    前回も今回も何故ヤギなのだろうか。私の前世はヤギだったのだろうか。

    「ンエエエエエエエエエ!ンエエエエエエエエエエエエ!!」

    何度かいきんだところで、突如「ドパッ」という音と共に、股の辺りで血液混じりの体液が弾けた。

     



    何だ今の!?

    助「破水だね。凄い勢いだねー(笑)」

    今のが破水!?あんなになるんだ!!?

    前回の破水は高位破水とかいう、かなり大人しい漏れ方のやつだったらしい。
    ドパッはキツいわ。これタクシーの中とかでならなくて良かったなあ。

    さて、最後の留意点、其の三。これが一番大事。

    それは、息を止め過ぎないこと。

    前回はいきむのに必死になり過ぎて、息を止め過ぎて、危うく息子を殺しかけた。
    今回はちゃんと呼吸をするぞ!一杯吸うぞ!!

    すうはあすうはあしながら待っていると、ようやく先生が到着。
    だが何だか手足が痺れてきた。

     

    「あの…何か手足が痺れてきたんですけど」と申し出ると

    「ああ、息の吸い過ぎだね。落ち着いて深呼吸して」と言われる。


    どうやら体内の酸素量が増え過ぎたせいらしい。吸い過ぎても駄目とか難しい。

     

    夫も入室し、ついに分娩開始である。

     

    「分娩中に喉乾いたらお水飲めるようにしておこう。飲み物持ってきてます?」

    助産師さんに言われ、夫が「あります!」と誇らしげに掲げるイチゴヨーグルトドリンク

     

     


    助産師さんはイチゴヨーグルトを数秒見つめた後

    「あー… 大丈夫ですよー、お水ありますからね!」

    と言って、水のペットボトルをくれた。

     

    夫は「ん?」みたいな顔をしていた。

     


    落ち着いて呼吸を整え、いきみ再開。
    三度いきむと、赤子の頭がググッと途中まで出てきた感覚があった。


    助「はい、一旦ストップ!赤ちゃんに最後の酸素あげよう。お母さんの体通してあげられるの、これが最後だよ」


    そうか、最後か。
    さっきの失敗を踏まえ、冷静に深呼吸。
    先生がぐい、と赤子の頭を中に押し戻す感覚があった。何だろうと思っていると、麻酔を打たれた。切開するらしい。
     

    前回みたいにジョキジョキ切られるのかなと待っていると、「はい切開終わりましたよ」と言われる。

     

    何の感触もなかった。どうやら今回はメスで切られたらしい。

    切れ味めちゃくちゃ鋭いんだろうなこれ。切られたことに気付かないレベル。

     

    そのままいきむのをやめてボケーッとしていると、しばらく経ってズルズル…と静かに赤子が出てきた。

     

    「はい産まれましたよ」

     

    あぎゃあ、あぎゃあ、と赤子が泣き声を上げ出した。

     

    前回は勢いよく産んで股が裂けてしまったが、今回はゆっくり出したので大丈夫だったらしい。

     

    赤子は重さを量られたり体を拭かれたりするために連れて行かれ、私は引き続き寝たまま胎盤が出るのを待つ。

     

    医者「あれ?出てこないな…」

     

    医者が私の腹を押したりしてみるが、胎盤が出てこないらしい。

    よくわからないので私はされるがままだ。

     

    医者「うーん、出ないなー…

     

    …はいちょっと失礼」

     

     

    そういうと、医者はおもむろに腕をズボッと突っ込んだ。

     

     

     

     

     

     

    えっ

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    えっ?????

     

     

    医者が体内の胎盤を鷲掴みにして、引きずり出した。

    ブチブチ、という感触があった。

     

     

    えええええええええええええええええええええ

     

     

     

     

     

    医者「よいしょっと…はい、取れました」

     

     

     

     

    ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ

     

     

     

    結構グロい…

     

     

     

    でもとにかく無事に済んだ。良かった。

     

    ちなみに先週の健診で3400gと言われ、4kg超えて産まれるのではないかと心配していた赤子の体重は実際には3145gでした。

    当てになんねーな予想体重。

     

     

    時刻は夜7時過ぎ。

     

    一旦退室した夫によると、隣のカーテンの人はまだ陣痛室で苦しんでるらしい。

     

    陣痛長いのは辛いな…

     

    頑張れ隣の人。

     

     

     

     

    ↑ちなみに3のつく日はサンクスデーで、同じくポイント5倍ですよ

     

     

     


    出産レポ(1人目)

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       ★内容の性質上、痛い・汚い表現が含まれます。予めご了承下さい★





      2011年4月30日 早朝―

      ふと、目を覚ました。
      携帯を引き寄せて時間を確認すると、午前5時40分。
      最近眠りが浅くなっているので、変な時間に目が覚めることは珍しくない。
      そのまま目を閉じ、寝直す体勢に入った。

      だが眠気を覚える前に、腹部の鈍痛に気付く。

      お腹が張ってるなあ…

      これもよくあることなので、特に気にせず、腹部をさすりながら再び目を閉じる。
      すぐに痛みは治まった。やれやれ、と息を吐いて、腹に当てていた手を下ろした。

      …眠りに落ちるより早く、痛みが再開した。


      “張り”はよくあるが、こんな風に続けて来ることは珍しい。
      今日はしつこいな、と思いながらまた腹をさする。

      これも直に治まり、さあ寝るぞともぞもぞポジショニングを直していると、また痛み始めた。

      流石にしつこ過ぎる。まさかこれ、陣痛では??


      携帯を手に取り、時間を見る。
      痛みが始まってから、次の痛みが始まるまでの時間を計る。間隔がバラバラならば前駆陣痛。一定ならば本陣痛だ。

      何回か計ってみると、12分くらいの間隔で痛みが繰り返し押し寄せてきていた。
      …陣痛だ…

      まさかこんなに早く来るとは!
      予定日まではまだ10日もある。入院の支度も、まだ何もしていない。

      やばい。荷造りしないと。

      それでもまだ、我ながら半信半疑だった。
      よく、「もう生まれる!」とか騒いで病院に行って、「まだまだですよ」って帰らされる人の話とか聞くし。

      私のこれも、一人で早合点しているだけで、まだ陣痛じゃないのかもしれないし…
      荷造りしながら、少し様子を見るか。

      病院に連絡するかどうかは、その後判断しよう。

      とりあえずトイレに入る。トイレに入らねば一日は始まらない。


      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



      あれ、破水…してるっぽい…???




      慌ててトイレを出て、妊婦雑誌を開く。

      出産前兆のチェックシートが付いていたはずだ。
      破水は尿漏れと間違いやすいらしい。尿との見分け方は…

      ・色、臭い
      ・継続して出続けるかどうか

      何度かトイレを出たり入ったりして確認する。
      やはり破水っぽい…
      破水ならば、ばい菌が入るのを防ぐためにシャワーも入浴も禁止だ。

      ああ、お風呂昨夜の内に入っておけば良かった…。

      朝入ればいいやと思って、そのまま寝ちゃった。失敗した…

      とりあえず夫を起こすことにした。
      私「今日出産になるかも」
      夫「ムニャ…え…ウソ…ムニャ…」

      荷造りを開始する。予め病院から貰っていた、必要な物リストを見ながら、バッグに詰め込んで行く。
      よし…準備終わり。

      これでいつでも入院出来る。

      病院に電話して指示を仰ごう。

      ちょっと気になったのは、現在朝の7時前だということ。

      深夜や早朝って、割増料金だと聞いたことがあるような…あれは分娩の時間の話だったろうか?
      早朝って何時までだろ。

      割り増しだったら嫌だな。

      お昼まで待とうかな

      少し逡巡したが、少々のお金をケチって取り返しのつかないことになっても困るので、観念して電話することにした。
      まだ7時にもなっていなかったが、すぐに繋がった。
      私「すいません、破水したっぽいんですが」
      ナース「そうですか。1時間程様子を見て、また電話下さい」

      様子見てって言われても、何見ればいいのか…少々困惑しながら受話器を置く。

      夫は漸く脳が動き出したらしく、「お風呂に入らないと」と言って、ふらふらと浴室に移動して行った。

      さて、本日出産となれば、長丁場になるかもわからんし、体力を付けねばならぬ。
      とりあえず食事だ。

      夕べの残りのご飯と味噌汁を掻っ込む。

      食べ終えて一息。指示された1時間には、まだ暫くある。
      陣痛の方も続いてるので、時間まで横になって休むことにした。
      あーお腹痛い。
      腹をさすりながら、何気なくまた時間を計ってみると、

      …間隔、10分切ってる。

      入院の目安が、10分間隔の陣痛ではなかったか。
      まあさっきの時点で既に12分だったわけだが、おいおい、これもうあんま余裕ないんじゃないの?
      夫も風呂を済ませて出てきたので、1時間にはまだ僅かに早かったが、再度病院に電話。
      陣痛が10分弱間隔になったことを告げる。
      ナース「ではすぐに来て下さい。正面玄関は閉まってますが、守衛に話しておきますので」

      よし、出動だ。タクシーを呼び、夫と共にいざ病院へ。
      病院へ着くとすぐに守衛さんが出て来て「栗原さんですね。こちらからどうぞ」と、通用口から案内してくれた。

      分娩室の前で待つように言われる。

      椅子に座って待っていると、何だか急速に気持ち悪くなってきた。
      何これやばい吐く。慌ててすぐ脇にあったトイレへ駆け込む。

      朝食べた物が出てしまった…。もっと消化の良いものを食べるべきだったのかも知れない。
      分娩室の前に戻ると、程なくして助産師さんがやって来た。検査をして状況を確認するらしい。
      夫を廊下に残して分娩室に入り、診察台に横たわる。
      助「確かに破水してますね…では陣痛の具合を調べます。30分程このまま待ってて下さい」
      お腹に付けられた器具から、陣痛の様子が心電図のような波形の線で記録される模様。

      一人でお腹をさすりながら待つ。
      部屋はカーテンで仕切られており、隣では一人の妊婦が今まさに出産中であった。

      「ううん、ううーん!」
      「はい、いきんでー!そうそう、上手上手!!」
      「はあはあ、もうやだー!もう無理ー!!」
      「頑張って!もう少しだよ!次で行こう、はい!!」
      「うううんー!!ううん、痛い、もうやだ、もう無理ー!!」

      おー大変だな。頑張れー。

      暫く同じような会話(?)が続いていたが、やがて「ほら、頭出て来たよ!もう少し!!」
      「ううーん!うえええん!!」

      「後ちょっと!!!」

      お、行くかー。行くのかー。

      「ほぎゃー!ほぎゃー!!」

      おおーーー。行った行った!

      「おめでとう!生まれたよ。元気だよー!!」

      よし拍手か!拍手だな!!

      隣で拍手が始まったら、参加しようと身構える。さあ来い!!


      拍手なかった。がっかり。
      上げてスタンバってた手を下ろし、再びお腹をさすっていると、隣で奮闘していた助産師さんが戻って来た。
      傍らの機械が吐き出す陣痛の波線を見て「陣痛の間隔、狭まってきてますね。じゃあ部屋移動しましょう」
      分娩用の服に着替え、連れて行かれたのは、分娩室のすぐ近くの部屋。
      ベッドがカーテンで仕切られて並べてあり、陣痛の始まった妊婦たちはここで分娩まで待機することになる。
      ここで待つように言われ、横になったら突然、再び吐き気に襲われた。助産師さんが嘔吐用の容器を差し出してくれ、間一髪セーフ。陣痛中に吐く人も、珍しくはないらしい。
      朝食べたの全部出たんじゃないか。食べた意味なかった。

      助産師さんが入院だか分娩だかの同意書みたいのを持ってきた。
      夫に指示し、バッグの中から印鑑を出して捺してもらう。

      助産師さんに「この状態から、どれくらい時間かかるもんなんですか?」と訊いてみると
      「んー、初産でしょ?まあ普通は15,6時間くらいかなー(笑)」と言われる。

      …この、お腹痛くなったり治まったりが、15,6時間か…
      長いな…きつい…

      助「肛門に圧迫感があったら教えてね」
      私「??はい」

      何だ圧迫感て。大便か。
      そういや分娩中に漏らさないように、事前に浣腸されるとか聞いたなあ。いつされるんだろ。不安だ。

      夫が手持ち無沙汰そうにしているので、とりあえず両家の親に連絡するよう頼んでおいた。
      まあ、実際に出産始まるのは15,6時間後だそうだから、一応「入院した」ってことを伝えるだけで。日付変わってからになるかもわからんな、出産は。

      それから腰の後ろをさすってもらうことにした。強くさすってもらうと痛みが和らぐらしい。

      「うう、痛みが来た。さすって」「治まった」「また始まった。お願いします」

      寄せては返す陣痛の波。治まったところで一息吐いていると、ベッドの傍らに立っていた夫が

      「何か朝早かったし疲れちゃった」

      もぞもぞ、と私の寝ているベッドに寝転び、すぐに眠りに落ちてしまった。

      えええええーーーー。そんな付き添い聞いたことない。

      狭い…お腹痛い…
      夫爆睡してる………

      いえ、別にいいんですよ…出産は女の戦場ですからね。
      陣痛ごとき一人で乗り切ってみせますよ。狭いけど。

      途中から、陣痛と陣痛の間の意識が飛ぶようになった。僅かな隙に寝て、体力を温存しようとする本能的なものなのかも知れない。

      どれくらい経ったか、ベッドの周りのカーテン越しに、誰かが近付いてくる音がした。
      慌てて飛び起き、傍らに立つ夫。
      付き添いが寝てたらおかしいという自覚はあるらしい。

      やって来たのは母だった。
      母早えー。前日まで「陣痛中に親が付いてても、何もしてあげられないし…お産近くなるまで行かないからね」とか言ってたのに。結局来ちゃったよ。


      時刻はそろそろ12時になろうかというところ。
      母の勧めで、夫は外に昼食を食べに行くことになった。付き添い交代。

      ベッドが広くなった。

      それを喜ぶ暇もなく、来た。『肛門への圧迫感』

      何…何これ…
      謎の力がググーッと肛門を内側から突き上げてくるような…
      これのことか…!!

      ナースコールで助産師さんに連絡する。
      「肛門への圧迫が始まりました」
      『あ、はーい。今行きます』

      すぐに助産師さんがやって来て、謎の器具を横に置いて診察。
      「うーん、まだ時間かかりそうだねー。顔も余裕ありそうだし、まだまだですね(笑)圧迫感が強くなったらまた呼んで下さいね」

      待機継続。後何時間続くんだろ、これ…

      母親に腰をさすってもらいながら、お腹を抱えて耐える。張りの痛みも結構強くなってきた。
      だが、この肛門圧迫は存在感が違った。
      どんどん強くなって行き、もうさっきまでの張りなど吹き飛ぶレベル。
      腹の中から拳で捻り降ろされてるみたいなこの感じ。捻りの利いた重いパンチ。
      スローでストロングなコークスクリューパンチがリーチの長さを生かしてかなり上から肛門へウオオオオ


      正直、今にも脱糞しそうな怖さがある。

      赤子でないものが出てしまいそうだ!!

      圧迫が強くなったら呼ぶようにとは言われたが、先ほど呼んでからまだ時間が経っていない。あんまり頻繁に呼んでたら馬鹿みたいだ。もう少し、もう少し我慢しよう。

      『グググググゥゥーーーーッッ(捻)』
      「う、ううっ!!!」

      堪え切れずに、呻きが漏れた。
      私の様子に動揺する母親。「そんなに痛いの?人呼ぶ!?」

      時間は経っていないが、これはもう充分に『強い圧迫感』として申告出来るレベルだ。
      ていうかこれ以上強くなったら出る。何かが出る。
      再度ナースコール。

      やって来た助産師さんは「我慢出来ませんー?まだまだだと思いますけどねえ」と苦笑している。

      さっき診てから殆ど経っていないのだから当然だ。

      「じゃ、もう一回診てみましょうね」

      だが診察を開始すると、助産師さんの「しょうがねえな(笑)」臭が収まった。
      「あら…?あー、結構来てますねえ…」
      少し逡巡して、「うーん…じゃ分娩室へ移りましょうか…?」

      もう出産かと焦る母を、「分娩室へ移ってからも、まだ何時間もかかりますから」と抑えて、助産師さんは私を分娩室へ誘導した。
      移動中は幸い強い痛みが来なかったので、普通に歩けました。

      助「栗原さん、今朝お通じありました?」
      私「え?あ、はい」

      そのまま分娩室へ通される。どうやら浣腸はせずに済むらしい。良かった。

      分娩台に寝かされて待機する間に、圧迫感は最高潮に達した。
      『ググゥゥゥゥゥゥーーーーッッッ』
      「エエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!」

      今まで上げたことのない奇声を上げてしまった。


      それは少しヤギに似ていた。

      「あーまだいきまないでね。堪えてー」

      いや、いきんでいるつもりはないんですが…この未だかつて体験したことのない圧迫感に抗おうと思うと自然と
      『グググゥゥゥゥゥゥゥーーッッッ』
      「エエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!」

      いきまず我慢ってどうやればいいの。

      何で「エ」なの。「エ」はおかしいと思う。

      助「…旦那さん、立会い希望でした?今どこに?」
      私「あ、今、外に食事に…エエエエエエエエエエ!!!!」
      助「連絡付きます?呼び戻した方が…」

      ?? でもまだ何時間も先なんでしょ、出産?

      私「いや、直に戻ると思うんで。別にいいです」
      助「…そうですか…??」

      廊下で待っていた母によると、この後すぐ助産師さんがやって来て「旦那さんを呼んで下さい」と言ったらしい。
      丁度食事を終えた所だった夫が、慌てて戻って来て分娩室へ入室。それが12時半。
      それから何度か「はいもうちょっと我慢してねー」「エエエエエエ!!!!」を繰り返した後、医師がスタンバイし、分娩が始まった。

      助「じゃあ、次に痛みの波が来たら、ここの手すりを掴んで思いっきりいきんで下さい。頭は持ち上げて、おへそを覗き込むような感じで力を入れてね」

      この圧迫感に合わせればいいらしい。よーし、行くぞーー。

      来たあ!
      「ふんぬーーーー!!!!!」
      手すりを握る手に力を込める。

      助「もっと、水の沢山入ったバケツを持ち上げるように!声出さずに力んで!息止めて!!」
      私「はあはあ、ふんーーーぬぬぬぬぬ!!!!」
      助「なるべく長く息止めて!頑張って!!」
      私「ぬぬぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」

      何度か波に合わせて力む。
      私「ぶはあ!はあはあはあ」
      助「はい、じゃ一回少し休もうか」

      夫が傍らで水のペットボトルを持って待機しているので、手渡してもらって少し飲む。

      助「よし、じゃ行こうか。自分のタイミングで始めて!」
      私「ふうー、ふうー、ん!ふぬうううううううううう!!!!!」

      息を止めながら、全力で力むことを繰り返していたら、助産師さんがこんなことを言い出した。
      「ちょっと休んで呼吸して…呼吸して!

      ほら、この音聞こえます?

      赤ちゃんの心臓の音!

      さっきより弱くなってるのわかる?

      酸素が足りなくて赤ちゃんが苦しがってるんだよ」

      私の腹部には赤子の心音を聞く器械が取り付けられていた。

      分娩室に響いている心音は、確かにさっきまでよりテンポが遅くなっているようだった。

      私は言われるままに深呼吸を開始したが、脳内は既に『息を止めて産む』という目標に占められており、他の思考は殆ど麻痺状態になっていた。

      息を止めることに全力を尽くしているのに、今更酸素吸えとか言われても困る。

      上の空で微妙な深呼吸を繰り替えす。

      私は良くわかっていなかったが、もしかしたら赤子の衰弱は結構深刻だったのかも知れない。酸素マスクを着けられた。
      横で見ていた夫によると、赤子の心拍か何かを表す数値が傍らのモニターに表示されていたらしいのだが、その数値が見る見る内に下がっていき、助産師さんと医師が無言でそれを凝視していたらしい。

      待つこと暫し、酸素マスクのおかげで数値は上昇を始めた。それを受けて医師が「切開します」と宣言。
      赤子が出やすいように、肛門を切られるのですよ。怖いですね。

      普段の私だったら、そんな痛そうなことはとても我慢出来ないのですが、その時はもう完全に脳が麻痺していて
      それで産めるんならいくらでも切って下さいよ状態

      局部麻酔の注射をされ、それが効くのを待って切開された。
      (この辺り記憶が曖昧。注射をされたのはもっと早いタイミングだったかも知れない)

      鼓膜ではなく、体を伝わる感触で
      『ジョキ、ジョキ』という音を聞いた…

      今思い返すと恐ろしいが、その時は何とも思わなかった。
      再び息止め&いきみ開始。

      「ふんんーーーぬううううううおおおおおお!!!!!!!!」

      2,3度、いきんでいたはずなのに気が付いたら脱力して分娩台に横たわっていることがあった。今考えると、酸欠で意識が飛んでいたのかも知れない。息止め過ぎだろ私。

      横たわった私の頭を、夫が撫でてくれている。
      何て優しいんだ。立会いにして良かった。

      後日聞いてみたところ、「前髪が邪魔になりそうだったから、頑張って横分けにしておいたよ!」とのこと。

      いや前髪とか本当どうでも良かったです。


      私「ふんんぬぬぬぬぬぬぬ!!!!!」
      助「頭見えてきたよー。頑張って、後少し!」
      私「ふんぬおおおおおおおおおおお!!!!!!」
      助「出た!」

      づるづるぶるん!!!!!

      頭が出た後は一瞬だった。全身がづるぶるっと滑り出て、産声が上がった。

      「ほぎゃあ!ほぎゃあ!ほぎゃあ!!」

      助「おめでとー、生まれたよ!」

      おおーーー。出たーーーーーー。


      特に感動はありませんでした。

      おかしい。もっとしずかちゃんのパパみたいに天使のラッパの幻聴が聞こえたり、生まれてきてくれてありがとうこんにちは赤ちゃんとか思ったりするのかと思ってたのに。


      ちなみに赤子は灰色だった。
      母親が冷え性だったり寒い環境に晒されてたりすると、赤子が保温のために自ら体に膜を張り、そのために灰色に見えるらしい。多分私が冷え性なせいだ。

      生まれたばかりの赤子(灰子?)は、ぬるぬるしてる上に色もそんなで、まるで宇宙人のようだった。
       

      出産



      ざっと体を拭かれ、「お母さんの心臓の音、聞かせてあげてね」とタオルに包まれて胸の上に乗せられる赤子。
      生まれたのは昼の1時ジャスト。気を失ったりしていたが、30分もかからなかったようだ。

      すぐに再び取り上げられ、赤子は何か色々されてる模様。
      「立会いはここまでです」とのことで夫は退室させられた。

      それから胎盤を出す。私の位置からでは何も見えなかったので、どうなっていたのかはさっぱりわからない。
      無事胎盤を出し終えた後、切開した所を縫合された。

      麻酔が切れ始めているのか、僅かだがチクリ、チクリと痛みがあった。
      「いてっ、いてっ」とか言いながら無事終了。

      処置が済んだ後、廊下で待っていた夫と母が入室して来た。
      赤子の方も色々済んで、服を着せられて私の脇に抱えるように寝かされた。

      母「きゃー、カワイイー!!」

      何で女って、赤ん坊見ると反射的に「カワイイー!」って叫べるんだろうな…
      拭われて服を着たことで、宇宙人臭さは薄れたが、生まれ立てで皮下脂肪の厚い顔はぼてっとしていて、どっかの古代文明の人面巨石のようだ…

      しかもおでこが産毛に覆われて灰色だ…
      こんなに灰色でいいのか…我が子…

      夫は携帯で写真を撮りまくっている。

      自分のお産が終わって漸く気付いたが、カーテンを隔てた隣の分娩台でもお産の真っ最中だった。

      助「頑張ってー、あと少し!」
      隣「うーん、うーん!痛いーもうやだー!もう無理ー!!」
      助「もうちょっとだよ!ほら!」
      隣「ううううん!もうやだーー!!!!」


      何か、朝分娩してた妊婦と同じこと言っとる。
      皆言うもんなのか?
      私は「ふんぬー!」と「お水ちょうだい」くらいしか言わなかったんだが…

      それよりお腹が空いてきた。
      そういえば、分娩室に入る前に待機してた部屋で、昼食のお膳が運ばれて来てたなあ。
      食事どころじゃなかったから手を付けなかったけど…あれもう下げられちゃっただろうか。

      母親に「私のお昼まだ残ってる?」と訊いていると、助産師さんが振り返って
      「お腹空きました?まだ下げてないと思うので、持って来ましょうか」

      是非お願い致します。

      私は、お産直後の体調を観察するためということで、2時間ほどここで寝たまま待機することになっているらしい。ブドウ糖の点滴を打たれる。
      夫と母が部屋から出された後、「赤ちゃんに初乳をあげてね」と、乳を含ませる形にされる。
      出る出ないに関わらず、吸わせるのが重要らしい。
      出たような出ないような、吸ったような吸わないような。

      暫くした後、赤子は新生児室へ連れて行かれて、私のお昼が運ばれて来た。
      うっひょー、待ってました。

      おにぎり二つにおかず一品、粉末にお湯を注ぐタイプの御汁が膳に乗っている。
      「寝たままの姿勢で食べて下さいね。5時からお夕飯だから、あまり食べるとお腹一杯になっちゃいますよ」

      どうせ寝たままじゃおかずや御汁は無理だし、おにぎりを一つだけ食べることにした。
      梅干(種抜き)が入ってた。美味い。

      むしゃむしゃ食べる。美味い。梅干おにぎり美味い。

      食べながら、ちら、と残ったおにぎりに目をやる。
      …あっちの具は何だろうか。
      鮭かな。うん、おにぎりの具といえば梅干と鮭だ。鮭の可能性は高いのではないだろうか。
      いや待てよ、昆布かも知れないぞ。昆布大好き。昆布だったら嬉しい。
      でも鮭でも良い。何だろう、気になる。食べたい。

      時刻は2時過ぎ…
      流石におにぎり二つ食べたらお腹が一杯になってしまう。5時からの夕食が…
      この病院は食事が豪華なのが売りなんだ…どうしよう…おにぎり…


      まーいいや!食べよう食べよう!
      未来の豪華飯より、目の前のおにぎり!!

      さー、具は何かなー!?
      鮭かな、昆布かな!!?それとも…!!





      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





      梅干だった。がっかり。


      ちくしょー、梅干とわかってれば夕食のために食べずにおいたのに。
      お腹一杯になってしまった。

      食べ終わり、ぼーっと時間が過ぎるのを待つ。
      隣も無事出産を終え、同じようにぼーっとしているようだった。
      あー暇だなあ…早く2時間終わらないかなあ…

      3時を過ぎた。点滴も空になったので、そろそろ呼びに来るかと思ったが、さっぱり人が来ない。同じ姿勢で寝てるのも疲れてきた。

      右手に刺さった点滴の針を確認すると、しっかり固定されているので、多少動かしても問題はなさそうだ。
      両手を頭の後ろで組んでみる。少し楽になった。

      それにしても遅いな。もう3時間経っちゃうんじゃない。
      トイレに行きたくなってきた…

      暫く我慢していたが、一向に人が来る様子はない。
      やばい。マジでトイレに行きたい。限界が近い。

      「何かあったら呼んで下さい」と渡されていた、連絡用の携帯電話に手を伸ばす。
      『はい、どうしました?』
      「分娩室で待機中の栗原です。あのう、トイレ行きたくなっちゃったんですが…」
      『あ、栗原さんですねー。…すみません、実は部屋がですね、個室希望されてたと思うんですが、今空きがなくて…。多目的ルームに一旦入ってもらって、部屋が空き次第移ってもらう形でも良いでしょうか?』

      多目的ルーム??
      そういや朝分娩してた妊婦も、そんなこと言われてたな。
      まあ空きがないなら仕方ない。それよりトイレに行きたい。

      了承の意を伝え、尿意を耐えながら待つ。

      漸く人が来てくれた。
      「じゃ、まずお着替えをしましょうね」
      体を拭いてもらい、病院で着せられた分娩時用の服から、自分で持ってきたパジャマに着替える。
      オムツみたいのを装着された。何か産後は悪露(おろ)とかいうのが出るらしい。悪露が何なのかは知らん。
      漸く身支度が終わり、トイレへ。もう限界だ。
      「終わったらこれ着けて下さいね」と、替えのオムツ的なものを渡される。
      「済んだら、ナースステーションの前で待ってて下さい」

      何とかトイレに間に合った。危なかった。
      無事に用を足し、流そうと振り返ると




      便器の中が真っ赤だった。 




      何じゃこりゃああああああ




      血だ!血が凄く出てる!!
      悪露って、この血のことなのか!!?

      そういや胎盤が子宮の壁から剥がれると出血するとか聞いたな…
      今まで血管で繋がってた器官が剥がれるんだもんな。そりゃ血出るよな…怖いな…

      ビビりながらトイレを出る。ナースステーションは目の前だ。そこで待機。

      待機…したはいいが、流石に出血もしてるし疲れもあるしで、立ってるのが辛くなってきた。
      数メートル離れた所に椅子があったので、座って待つ。

      暫くして、さっきの人が来た。部屋へ案内される。

      部屋っていうか、多目的ルームだ。簡易ベッドが何台か並べられている。(カーテンの仕切りはある)
      本当に満床なんだな…今の時期って出産ラッシュなのかね。
      ちなみに朝分娩してた人と、さっき隣で産んでた人も同じとこだった。一言も会話はしなかったけど。

      夫がベッド脇で待っていた。母は一旦帰ったらしい。
      ベッドに寝っ転がり、家に残してきた腐りそうな食べ物の処理を頼む。

      間もなく夕飯だ。

      お腹は空いていない。失敗した。

       

       

       

       

       

       


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      栗原まれんど

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